転職できず、ニートになった。履歴書に“傷”がついた若者に贈る、早期退職への処方箋

「88%」——。エン・ジャパン株式会社が行なった正社員で勤務する20~40代の5,584名へのインタビューで、「副業に興味あり」と回答した人の数だ。古くから日本企業が謳って来た「終身雇用」は幻になり、正社員であっても、その大半が複数の収入源を得たいと考えている。しかし、実際に副業経験のある方は、「33%」に止まっている。この数字の乖離からは、「副業をしたくても、できない」企業体質や、「何から始めていいのか分からない」という不安が関係しているのではないだろうか。 本記事では、“複業”研究家の西村創一朗と、第二新卒・既卒者向けに特化した就職支援を行なう株式会社UZUZ代表の今村邦之が、「20代の副業(複業)」について語り合った対談の様子をダイジェストでお届けする。 5年後に当たり前になるだろう「副業解禁」を前に、20代の私たちは、どのような準備をすればいいのだろう?ふたりのキャリアを遡り、職歴が重視される転職市場の攻略方法や、履歴書に“傷”がついたときの対処法を考えた。
 
Text by 田代智美 Edit by オバラ ミツフミ

「失意の水族館デート」を経験しました。複業研究家・西村創一朗の就活体験記

スクリーンショット 2018-09-02 13.58.28 今村邦之(以下、今村):第二新卒・既卒者向けに特化した就職支援を行なっている株式会社UZUZの今村邦之です。本日は、「20代の副業(複業)」についてお話ししたいと思います。 西村創一朗(以下、西村):複業研究家の西村です。20代は会社の中で課せられる業務量も多く、本当にやりたいことと、会社の業務が乖離してしまっているケースが少なくありません。若い世代が自分らしいキャリアを描けるよう、本日はお話をさせていただきます。 今村:まずは、私たちが20代をどう過ごしてきたかをお話しましょうか。西村さんのキャリアはメディアでもたくさん掲載されていますが、直近は体調を崩されたことについてが多い気がします。なので、まずは「複業研究家」になる以前のお話をお伺いさせてください。 nishimura-01 西村:僕はリクルートエージェント(現:リクルートキャリア)の出身です。リクルートエージェントをファーストキャリアに選んだ理由には、貧しい家庭で生まれ育ったことや、大学生で子供を持ったことが関係しています。 まず、僕は生活保護を受けていた母子家庭で育っています。昔から「親の稼ぎではなく、世の中の人たちが稼いでくれたお金で生活してた」と考えていたので、社会に出るのなら「世の中に貢献したい」と強く思っていまいした。 そうした考えを持っていたなか、学生時代に彼女が妊娠し、子供を持つことになります。いわゆる、学生パパです。若くしてパパになったこともあり、父親の子育てを応援するNPO「ファザーリングジャパン」に参画。ここで感じたことが、僕の職業観を確固たるものにしました。 全力で子育てをしながらも、仕事に妥協しないパパと、会社の残業などの働き方が関係し、満足に子育てに時間を割けないパパに出会ったのです。この現実を目の当たりにし、「日本社会の働き方を変えなければならない」と思いました。 そこで、日本社会を会社に見立て、就職先を考えてみました。リクルートエージェントは会社の人事部に相当する存在だと感じたのです。およそ400万もの企業があるなかで、リクルートエージェンはHR領域において、主要な企業の大半と取引をしています。ここでビジネス経験を積めば、世の中の働き方を変えられると仮説を持ったのです。社会の役に立てる、そして、世の中の働き方を変えられる仕事が、リクルートエージェントだと考えました。 スクリーンショット 2018-09-02 13.59.48 今村:ここまで話を聞くと、就職に関しては順調なキャリア形成ができてきているように感じます。 西村:ただ、たくさんお見送り(=不採用通知)も経験をしていますよ。一番最初に最終面接を受けたインターネット調査会社・マクロミルは、2週間のサマーインターンを経験していましたが、落選しています。 最終面接はちょうどクリスマスだったので、妻と子どもと一緒に会社に向かい、面接中は近くで待たせ、その帰りにしながわ水族館に行きました。しかし面接の手応えがあまりになく、失意の中だったので、水族館のことは全然覚えていません。リクルートエージェントに内定をもらえたのは結果論であり、就活が順調だったかといえば、そうではないのです。

履歴書に傷がついた経験から、起業。今村邦之の“ウズウズ”していた20代

西村:今村さんの経歴についてもお伺いさせてください。UZUZは、第二新卒・既卒者向けに特化した就職支援を行なう会社だと聞いています。正直なところ、既卒者や第二新卒者は、企業の人事担当者から見て「喉から手が出るほどほしい人材」ではありません。つまり、あまり儲からない。それでも、会社を立ち上げたのはなぜでしょうか? スクリーンショット 2018-09-02 13.52.32 今村:自分自身、転職で苦労したことが創業のきっかけです。アメリカの大学をトップクラスの成績で卒業したのですが、新卒で入社した企業を体調不良が関係して9ヶ月で退職しました。すると、「すぐに辞めるやつを雇うわけにはいかない」と、なかなか転職ができなかったんです。 「若手募集」と銘打った面接を受けても、書類先行の時点で何度も落ちました。大学時代の友人との間にはどんどん差ができ、疎遠になりましたね。さらに、自分自身「何がしたいのか」が分からなくなり、人生の迷路に迷い込んでしまったのです。そうした経験から、「迷路を突破できるサービスがあればいいのに」と考え始めました。 ただ西村さんのおっしゃる通り、既卒者向けのサービスは「あまり儲からない」。つまり、そんなサービスはほとんどなかったのです。でも、そこを逆手に取れば「競合がいない」わけです。「一発当てて、人生を切り開いてやろう」と腹をくくり、株式会社UZUZを立ち上げました。 >>UZUZさんに相談に乗ってもらいたい…!という方はコチラ<<

5年後、大企業の“副業解禁”は当たり前になる

今村:西村さんは前職で、法人営業、新規事業企画、採用担当と順当なキャリアを歩まれています。そうしたなか、「複業研究家」として独立できるまでに、複業でも収益を上げられていました。もともと「働き方」に興味を持っていたことが、その背景にあるのでしょうか? スクリーンショット 2018-09-02 14.01.20 西村:「複業研究家」としてお仕事ができているのも、本当に結果論でしかありません。入社3年目に複業としてブログを始め、たまたま月間20万PVとなったことが、今に至る最初のきっかけ。今村さんと出会うなど、お仕事をいただけたことで収益が上げられるようになったんです。 そうしたなか、世の中で複業推奨の機運が高まり、本業と複業をスイッチすることを決めました。独立するつもりはありませんでしたが、改めて「働き方を変えることで世の中を良くしたい」という想いが強くなったんです。 そこで、「働き方」にもいろいろありますが、複業を働き方改革の一つの軸にしようと考えました。実験的に「複業研究家」を名乗り始めたのですが、色々と活動していくうちに、国会議員の方から連絡をいただくなどさまざまな依頼が舞い込むようになったんです。 今村:人材領域で仕事をしていて、副業をよしとする企業は、とても少ないと感じています。UZUZでは「離職率を低下させる」ことと、「採用量を増やす」という2つの目的から、副業を推奨しています。スキルがついて独立しようと思ったときに、副業可能であれば、離職の抑止力につながりますよね。 また、自分が既にもっている仕事と両立できれば、一つの会社以外にも接点を持てます。つまり、他社に本業がある方にも、弊社で働いてもらえる可能性が高い。副業を解禁することは、離職抑制と採用力強化が実現できるはず。大きなメリットがあるのに、普及しないのはなぜでしょうか。 西村:おっしゃる通り、退職・離職防止や、優秀な人の採用力強化などのメリットがあります。他の要素も含め、「複業解禁の7つのメリット」と呼ばれたりもします。そうした話をすると、よくデメリットに関する質問を受けるのですが、デメリットはありません。 よくよく勘違いされがちな副業解禁のデメリットとして、「副業を解禁すると、独立を考える人が増え、離職率が上がる」という意見があります。ゼロかイチで考えると可能性を否定はできませんが、そもそも独立しようとする人は副業を禁止していたら辞めなかったのか分かりません。むしろ副業を解禁していたら、社外で見つけた興味あることで、まだうまくいくか将来性がわからないことを「(本業を続けたまま)副業としてやってみたら」とすすめることで、離職抑制できます。 けれど、副業を禁止していたら、やりたいことを諦めて会社に残るか、やりたいことのために起業・独立・転職するかの2択となります。複業を解禁することでの離職抑制の可能性の方が、副業禁止に伴う離職の可能性を相殺して勝ると考えています。 他にも、「情報流出・漏洩の可能性が高まる」といった声も聞きます。実際に、某ITコンサル企業の役員が(副業を通じて)社外に情報を流出させ、日経新聞の記事になったこともありました。現に実例があるので、可能性がゼロとは言えません。しかし、副業を禁止している企業では情報が流出していないかといえば、そんなことはありません。 私が知る限りでも、大手上場企業で、副業を禁止しているにもかかわらず情報漏洩している例はいくらでもある。他にもさまざまなデメリットを挙げる人はいますが、全てカウンタートークすることができます。 スクリーンショット 2018-09-02 14.02.21 今村:そうなってくると、「副業を解禁する」という最初の一歩を踏み出すのが怖いだけなのかもしれませんね。周りの会社が始めたら、みんな追随するのではないでしょうか。 西村:まさにおっしゃる通りで、恐れているようなことは起こらないんですよね。解禁に対する不安感から、特に理由もなく禁止している状況なんです。 こうした状況は、副業の話に限らず、大手企業によくあることです。情報のクラウド化をいくら提案しても、情報流出やハッキングの懸念によりなかなか踏み切れない構造と似ています。 ただ、今村さんがおっしゃる通り、日本は“横並び主義”です。トヨタが副業を解禁すれば、自動車業界全体がほうが追随するはず。日本を代表する企業が最初の一歩を踏み出せば、日本全体が変わるんです。僕の推測ですが、5年後には副業解禁が当たり前の社会になっていると思いますよ。ネガティブなイメージが持たれやすい「副業」ではなく、複数の職を持つことが良いキャリア選択と認められる「複業」の時代になってくれたら、と思っています。

職歴が重視される転職市場の攻略方法。怪しい複業より、正しいスキルアップを

スクリーンショット 2018-09-02 14.03.57 今村:オーディエンスの方から「複業がしたいと考えている人には、どのようなアドバイスをしますか?」と質問が来ています。 西村:大前提として、副業にも目的が必要です。よく相談を受けるのですが、複業を考えている人のなかには「なんとなく副業ブームだから」と、漠然とした考えの人も少なくありません。また、収入アップやキャリアチェンジの手前に複業を考えている人もいます。ただ、それではまだ粒度が荒いです。 複業を「楽して儲かるのもの」と勘違いしている人がいますが、そんなことはありません。本業で一生懸命頑張ったとしても、なかなか給料は上がりません。それなのに、副業でちゃりんちゃりんとお金が手に入るなんてことはないのです。 私自身、入社してから複業を始めるまでの2年2ヶ月は、脇目も振らず本業一本でした。そこで鍛えられたからこそ、複業でも稼げるスキルが身についたのです。 今村:おっしゃる通りですね。現在の転職市場では、「職歴がないとだめ」といった条件がたくさんあります。なので、本業を一定期間行なっていないと、そもそも転職すらできない。なので、複業を考えつつも、本業にしっかりコミットする期間も大切だと思います。 スクリーンショット 2018-09-02 14.04.24 西村:ただ、今村さんのように止むを得ず早期に退職をしてしまう人もいるでしょう。そうした人は、どのようにキャリアを作ればいいのでしょうか。 今村:「職歴がないとだめ」と判断される理由には、研修を受けたことがない、ビジネスメールが書けない、マインドが弱い、専門性がない…といった判断を受けてしまうことが挙げられます。ただ、そこが補填されていれば、問題ありません。弊社では、UZUZカレッジという無料の学校で、そのトレーニングを行なっています。 西村:なるほど。すると、転職も可能になるのでしょうか? 今村:トレーニングを一度でも受けた実績があると、企業さんも見方が変わり、突破できるようになっていますね。 西村:素晴らしいですね。就職後まもなくキャリアに迷ってしまったら、怪しい副業にすぐ手を出すのではなく、UZUZカレッジに相談に行く方が良い選択だと思います。 スクリーンショット 2018-09-02 14.05.12 今村:僕も転職希望者の相談に乗ることが多いのですが、先々に複業を見据えたキャリア選択ができるとより良いな、と考えました。ありたい自分になるためには、転職以外の選択肢があってもいいですよね。 西村:もちろんです。こういった仕事をしていると「複業推進論者だ」と勘違いされやすいのですが、全員が複業すべきだとは思っていません。あくまで複業は選択肢の一つだと思っています。本業をやっているなかで、何か別の仕事をしたいと思ったときに、複業という選択肢が当たり前の社会を作りたいと考えています。 >>UZUZさんに相談に乗ってもらいたい…!という方はコチラ<<